土、木、草、石―自然素材の自由なアプローチ 藤森照信インタビュー

2016.10.29

土、木、草、石―自然素材の自由なアプローチ 藤森照信インタビュー 土、木、草、石―自然素材の自由なアプローチ 藤森照信インタビュー

よりよい住まいを創り出す人たちへのインタビュー

MATERIAL INTERVIEW #03 TERUNOBU FUJIMORI

土、木、草、石―自然素材の自由なアプローチ 藤森照信インタビュー
土、木、草、石―自然素材の自由なアプローチ 藤森照信インタビュー

空間づくりに関するさまざまな分野で活躍する方々にお話をうかがう「MATERIAL」のインタビュー。
3回目となる今号では、「MATERIAL」主宰の坂田夏水がその現場施工スタイルに大きな感銘を受けた建築家・藤森照信さんをお招きしました。

日本でもっとも影響力のある建築家のひとりである藤森さんが、本誌のためだけに出してくれた最新アイデアも必見です。

藤森照信(ふじもりてるのぶ)

1946年長野県生まれ。建築史家。建築家。東京大学名誉教授。工学院大学教授。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。1983年、『明治の東京計画』(岩波書店)で毎日出版文化賞受賞。1986年、赤瀬川原平、南伸坊らと「路上観察学会」を発足。1991年〈神長官守矢史料館〉で建築家デビュー。1997年〈ニラハウス〉で日本芸術大賞、2001年〈熊本県立農業大学校学生寮〉で日本建築学会作品賞を受賞。『日本の近代建築』(岩波新書)、『フジモリ式建築入門』(ちくまプリマー新書)、『藤森照信建築』(TOTO出版)など著書多数。

藤森さんの本業は建築史の研究。

でも、建築家として作品もつくるし、「建築探偵」でもあるし、「路上観察学会」の活動もする。

もし藤森さんのことを知らない人がいても、これらの情報を聞けばそれだけで「なんかこの人、面白そう……!」とピンとくるはず。そう感じた人は正解。

藤森さんは「面白い」をつくりだす天才だ。
その面白さは奇想天外な藤森建築に凝縮されている。

藤森流といえば、土や木などの自然素材を使った「毛深い」建築。

たとえば、鉄筋コンクリートの構造体を地元の石や土や手割りの板ですっぽり包んだ〈神長官守矢史料館〉、屋根にタンポポを植えた自邸〈タンポポハウス〉などがその代表例にあたる。

なお、〈神長官守矢史料館〉は、建築家の隈研吾さんが「見たことがないのに懐かしい」と称したことでも知られる作品だ。
今回は、その「毛深くて懐かしい」作品に共通する素材選びについてお聞きするとともに、制作の裏話などもうかがった。

聞けば聞くほど、「こういう大人になりたい!」と思わせるお話が飛び出してくる。ぜひご一読を。
(聞き手・坂田夏水/取材協力・須田奈津妃)

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土は「本質的」な素材という結論にたどり着いた

―藤森建築の内外装の仕上げには、土、木、草、石、モルタル、漆喰がよく使われています。

それはなぜでしょうか?

藤森:昔から使われている素材、とくに自然のものは、見飽きないし流行がない。たとえば土。土の流行というものはないでしょう。
ただ、難しいのは、土は表情を持たないんです。木や石はちゃんとした表情を持っているけど、土は基本的には表情を持たない。人間を含む生物は土の上で成立してきた。
土が表情を持っていたら、その上で人間は暮らしていけないでしょう?そういう意味でいうと、土は人間の視線や意識を吸い取るんだよ。反応がない。別に邪魔にもならない。
あまり に本質的なものっていうのは、そういうものなんです。
だから、土というものは「材料界における空気」みたいなものだと思ったらいい。土を使った美術展なんかがたまにあるけど、美術館の中でやる場合はだいたい失敗していますよ。
土の作品の横に題がついていて、つくった人の名前が書いてあるっていうのは、その人がまるで地球をつくったみたいで、すごくばかばかしく思える(笑)。

人間の日常的な表現や鑑賞というものを超えているんですよ、土は。誰がやっても土になるし、誰がやっても土にしかならない。

―だから土が魅力的であると。

藤森:魅力的というより本質的だね。そういう意味では使いやすいし使いづらいですよ。だって、誰がやったって失敗しないんだから。じゃあわざわざ自分がやらなくてもいいっていう気にもなるし(笑)。

〈神長官守矢史料館〉の外壁に土を塗って以来、土を使ってきましたけど、最近はそういう結論に達しています。

―土を使おう、という発想のルーツはどこにあるんでしょうか?

藤森:子供のころの泥遊びにルーツはあるのかもしれない。

土っていうのは遊びの基本だから、大人だって、泥遊びやったら楽しいんですよ。大人ももっと泥遊びをしたらいいんです(笑)。
ドイツでは泥のメーカーがいろんな努力をしていて、まず子供に泥を楽しんでもらうための遊びのプログラムみたいなものを持っているの。そうやって遊んだあと、子供が泥を塗る、その下地の材料なんかもちゃんと全部揃っている。ヨシかなんかを使った下地材でね。

いやぁ、よくできているな、ドイツらしいなと思いますよ。

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白と黒は平気なの
あれ色じゃないからね

―藤森さんは作品に色や柄を取り入れないということは重々承知しているんですが、もし、色や柄を使うことがあったら、どんなものを選びますか?

藤森:うーん、色ね……。

色ってね、使える人と使えない人がいて、使えない人はいくら訓練しても使えるようにはならないんだよ。

理論や教えでどうこうなるものではなく、身についているものだから。
建築家の色遣いなんかを見ていても、下手な人っていうのは絶対に直らないね。

一方、うまい人は最初からうまいです。私も自分自身が色を使えるとは思ってないから、できるだけ使わないようにして、自然の色と白と黒を使うようにしています。

白と黒は平気なの、あれ色じゃないからね。

―「白、黒は色じゃない」というのはどういうことですか?

藤森:科学的に、色っていうのは光の中のどの波長を反射するかで違いがでてくるものですよね。

そういう科学的分析で見ると、白は光を100%反射したもので、黒は100%光を吸ってしまっているもの。プリズムの虹色に白と黒はないでしょ?

そう考えると、色の外に白と黒の座標軸があるとも言えるし、逆に白と黒の間に色があると言ってもいいかもしれない。
だから白と黒は、ほかの色とはくらべものにならないものですよ。

ほかの色にはない力というか、性格を持っている。

だいたい黒っていうのは闇で、死の世界を表すようなもの。

一方の白は「頭の中が真っ白になる」というような使い方もされる。そういう点でもほかの色とは違います。

―なるほど。だから自然の色以外に、白と黒を意識的に使っているんですね。ほかには、金箔なんかも使われていますが……。

藤森:あれはちょっと変なもんなんですよ(笑)。

白・黒・金っていうのはね、独特の世界。なんにでも合うのよ。

―金属でいうと、銅も使ってらっしゃいますね。

藤森:銅は最初こそ金属の色をしていますけど、徐々に自然に変わっていくから。

やわらかい金属の色はいいですね。

同じ金属でも、ステンレスになると使えない。あの“ぴかぴか ”はなんとも……。

今まで使ってきた中で使っても大丈夫だと感じる金属は、鉛、銅、すず、鉄だね。あとはアルミがぎりぎり。
アルミは何に使ったかっていうと、台所の天板。

刃物を使うから木やプラスチックがいいんだけど、水に強くなくちゃいけないから木でつくるわけにもいかない、プラスチックもだめ、ステンレスはもちろんいやで、

最近はようよう厚いアルミなら大丈夫だとわかりました。

フレスコ画をやってみるのはどう?

―柄を取り入れないのも藤森さん流ですが、〈ツバキ城〉で薄いプレートと芝生を斜めに配置してあるのは、柄というか模様にも見えます。

藤森:模様といってもあれくらいが限界なんです(笑)。

斜め45度というのは、伝統的には禅宗の床でも使われているんだよね。あとは江戸時代のなまこ壁。〈ツバキ城〉はちょっと江戸っぽいよね、京都っぽくはない。

あんまり京都っぽいのは好きじゃないから(笑)。

―ちなみに、今まで手掛けた建築や内装の中で、もっとも装飾的だったものは何ですか?

藤森:漆喰の内装の壁面に、ランダムに炭をぺたぺた貼った〈ストークハウス〉ですね。

あれは大規模にやりましたけど、それでだいたい装飾的なアプローチは行き着いたと思っています。
あれをカラーでやってみたいとも思うんだけど、ずーっといい材料が見つからない。

あの炭のピースを緑とかブルーとかピンクとかにしたら、と考えているんだけど、炭に代わる材料が見つからないんです。

絵の具でやろうか、布を切ってやろうか……どうしたらいいだろう?

―それ、「MATERIAL」でやりましょう!

藤森:じゃあ、フレスコ画にするのはどう?

壁に漆喰を塗って、生乾きのときに鉱物性の絵の具で色を挿して。

フレスコ画って、生渇きで色を入れるから色がしみるんだよね。

あとは、布のピースをぴっぴっと切って、その上にのりづけしていくのも、おもしろいね。

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似たものになってしまったら、その時点でやめる

―今までの作品について、「歴史の様式をしない 誰の真似もしない環境をこわさない」「無国籍でインターナショナルなバナキュラー」と著書に書かれていました。

スタイルのない建築の発想はどこからくるのか知りたいです。

(※バナキュラー……その土地の固有のもの、固有の様式)

藤森:私は、ほかの人の真似を一切できないという状況で建築を始めたわけです。

だって、45歳まで評論とか歴史をやっていたでしょ。

歴史的な様式に沿うと「やっぱり歴史家だから」と言われておしまい。

―とはいえ、これだけいろいろな様式があれば、どこかで似たものになってしまうと思うんですが……。

藤森:似たものになってしまったら、その時点でやめるよ。

○○風になってしまったものは、「ああ、こりゃだめだ」と割と自覚的にはずしていきます。

―たとえば〈養老昆虫館〉は、大きな楕円形の壁がどんと出てきて、大きな屋根がかかっていて。

あれはどのように生まれたものなんですか?

藤森:もうさんざんスケッチして、その都度「いい、わるい」とふるいにかけていった結果、最後に残ったスケッチでつくった。

だけど、それは個別の判断の重なりの結果だから、なぜあれがいいと思ったのかっていうのは自分ではわからない(笑)。

―南伸坊さんがイラストを描いた〈養老昆虫館〉の「バカの壁」は、

私も打ち合わせに参加させていただいたんですが、「ここには馬と鹿の絵を入れるんだよ、ははは」と楽しそうに話されていたのが印象的でした。

まるでいたずらを思いついたみたいな口ぶりで(笑)。

藤森:あれは完全に思いつきだからね(笑)。

割とそういう変なこと、子供のようなことは思いつきやすいから。

でも、あの発想がどこからきているのかってのはわからない。自分の中の造形原理がどこにあるかは、自分にはわからないんだよ(笑)。

宗教団体の本殿をつくってみたいね(笑)

―設計家が一緒に施主と現場に入って、一緒に丸鋸で作業したりフローリングを張ったりというケースがまわりでは増えています。

藤森さんは著書の中で「日本でもデザインビルドをやればいい」「施工について教育しなければならない」「ものをつくる喜びを知ってほしい」とおっしゃっていますが、

施主も参加して、自分の住まいを自分で楽しくしていく、ということについてお聞かせください。

藤森:(「MATERIAL」に出てくるような)こういう手仕事的なところは重要だし、施主が施工の感覚を持っていることも大事じゃないかと思います。

外国の場合、とくにアメリカの場合は、自分で自分の家をつくるという考えが浸透しているよね。

それは工具や建材を置いてある店に行けばわかる。

大きな窓が置いてあったり、バスタブが置いてあったり……。バスタブを置いているということは、水道工事も自分でやるということでしょ?

それは日本ではまずないことです。
あとは、普通の人があまり使わないような重機がレンタルされているのもアメリカらしい。

西部開拓時代以来の伝統が脈々と息づいているのだと思います。一方、日本の場合は、伝統は関係なしに、自分の楽しみとしてやるってことになるんでしょうね。

―日本では「楽しみ」としてやるのが重要なんですね。

実際、藤森さんと一緒に現場施工をすると、「泥団子を投げろー!」「カンナで削れー!」「栗の木を伐れー!」「金箔を貼れー!」「杉を焼けー!」とお祭りのようで、今思い出しても笑ってしまうほどでした(笑)。

最後に、次の作品の展望をお聞かせください。
藤森:宗教団体の本殿をつくってみたいね(笑)。

信者3万人くらいがアリのように張りついて本殿をつくっていて、彼らが去ると、スッとそこに神殿があらわれるの(笑)。

―それは面白いですね! これ、書いてもいいんでしょうか? (笑)

藤森:いいよ、いいよ。どうせ注文はこないだろうから(笑)。

インタビューに登場した藤森建築

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インタビューその後・・・

その後、藤森さんがインタビューの中で語ったフレスコ画を、なんと実際に作っていただきました!
その様子は近日公開!

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