「自分で育てる空間」 の心地よさ モデル・女優 KIKIインタビュー

2017.02.02

「自分で育てる空間」 の心地よさ モデル・女優 KIKIインタビュー 「自分で育てる空間」 の心地よさ モデル・女優 KIKIインタビュー

よりよい住まいを創り出す人たちへのインタビュー

MATERIAL INTERVIEW #04 KIKI

「自分で育てる空間」 の心地よさ モデル・女優 KIKIインタビュー
「自分で育てる空間」 の心地よさ モデル・女優 KIKIインタビュー

1978年東京生まれ。
武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。大学在学中よりファッションモデルとして活躍。

以降、雑誌やTV、CM、映画、ラジオだけでなく、エッセイやコラムの連載執筆など多方面で活躍。
時間を見つけては旅へ出かけており、写真、アウトドアや登山などにも造詣が深い。『山が大好きになる練習帖』( 雷鳥社)、『美しい山を旅してKIKI’s MOUNTAIN JOURNAL』(平凡社)、スタイルブック『KIKI LOVE FASHION』(宝島社)など著書多数。

武蔵野美術大学の建築学科卒業後、モデル業を務めながら、空間プロデュースの仕事に携わっていたKIKIさん。
愛媛県の道後温泉で開催された「道後オンセナート2014」にて、KIKIさんがプロデュースしたホテルの一室「椿ヒュッテ」を見たという人もいるのではないだろうか。
椿の写真がどかんと壁に貼られたその空間は、KIKIさんのプロデューサーとしての力量とアーティストとしての側面がつながった瞬間をこれでもかと表していた。
今回のインタビューでは、プロデューサーやアーティストとしてのプロ目線と、そこに暮らし住まう人としてのプライベート目線をごちゃまぜにして、KIKIさんの空間づく
りをフィーチャーさせていただいた。「MATERIAL」インタビューでは毎度おなじみの、ゲストとのコラボレーション企画についてもお見逃しなく。

故 東松照明作品にインスパイア?

――Decor Tokyoの店内をぐるりと見ていただきましたが、いかがでしたか

KIKI:いろいろ買っちゃいそう(笑)。

アンティーク金物をパリののみの市で買ったりもするんですけど、それよりずっと手が出しやすい価格の金物があったり……ペンキ缶もあんなに素敵なら飾っておけますね。

学生のころはペンキでテーブルやイスを塗ったりもしていたんですが、当時はキレイな色がなくて。
――D.I.Y.されるんですね。

KIKI:でも、今まで自分でやろうと思ってやったことは敷居が低いことばかり。

特に「面」で楽しめることって難しくて、好きな柄の布を買ってきてカーテン代わりにする以外はやったことがないんです。

だから、貼ってはがせる壁紙は、使える場所の幅も広いし、すごくいいなって思いま
す。

今までは、はがせないことが足かせになって「どうしよう」って悩んで結局やらなかったので……。
――今のご自宅の壁は白ですか?
また、最近ではふすまに壁紙を貼る人もすごく増えているんですが、ご自宅にふすまなどがあれば色や模様を教えてください。

KIKI:基本的に壁紙は全部白ですね。

ふすまは、どんな柄でどんな生地だったか全然覚えてない……ってくらい主張がありません(笑)。
――みなさんに「壁紙やふすまの色、何色ですか? どんな模様ですか?」って聞くと、だいたい「気をつけて見たことがないからわからない」っておっしゃいます(笑)。
ちなみに、真似してみたい壁紙、たとえば旅先のホテルで見つけて気に入ったものなどはありますか?

KIKI:真似したいなって思った壁はあります。

白い壁に直に絵が描いてあって……シンプルな一輪の花が大きく描いてあるんです。
――素敵! そのボタニカルなイメージを生かして、KIKI さんプロデュースの貼ってはがせる壁紙をつくりましょう!

KIKI:いいですね!

今、(写真家の故)東松照明さんの作品で、ブルーのバックにアネモネみたいな花が、しかも枯れ始めているような花が置いてある写真があるのを思い出したんですが、ああいう雰囲気もいいと思います。

茎の部分に毛が生えているような植物独特な質感で、花がぐねっと曲がってしまっているような……。
――バックはブルーがいいですか?

KIKI:薄いグリーンやグレーもいいかもしれない……。

モチーフは、アネモネに限らず、いろんな山野草を緻密なイラストで起こして。
うん、やっぱり山野草がいいな。山野草、好きなんです。

とかいって、普通の植物にしちゃう可能性もあるかも(笑)。

 

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濃い色の空間で「陰影礼賛」

――ちなみに、ご自宅はシンプルですか?
KIKI:割とシンプルなんですけど、ものは多い(笑)。
本と趣味のものが多くて、納戸にはスキー板やアウトドア用品、自転車などがぎゅうぎゅうなんです。
ウィンタースポーツだけでも、スノーボードが2枚にスキー板が私と夫と各2本とあるので、納戸の中はちょっと人には見せられないです(笑)。
アウトドアを仕事にしている方のおうちにお邪魔すると、道具部屋みたいなものがあって、すごくかっこいいんですよね。
そうやって、収納することでかっこよく見える部屋があったらいいな、とも思っているのですが、今は飾るところとしまうところを分けているような感じです。
――インテリアや内装で使いたい色や模様についても聞かせてください。
KIKI:好きな色は歳とともに変わってきてはいるんですけども、ここ最近落ち着く色……というか既存の場所にプラスする色はグリーン系が多くて。
以前、お仕事で道後温泉にあるホテルの一室の改装をプロデュースしたことがあったのですが、そのときは迷わずじゅうたんをグリーンにしたんです。
それは昔からすごくやりたかったことで。
――「道後オンセナート2014」ですね。道後温泉のある松山市の花であるヤブツバキの写真を壁面に大きく使って。あれは素敵でした。
KIKI:ありがとうございます。あのときは「山小屋」っていうイメージがあったので、それも含めてグリーンにしたんです。
あと、グリーンに惹かれる理由としては、子どものころ住んでいたマンションの床が濃いグリーンか濃いブルーだったこともあるのかもしれない。
それがすごく印象に残っていて、「なんか落ち着く」って思うのかも……。
――昔の住宅って印象的な色を使っていますよね、柄ものの床とかもありましたし。
最近の住宅は、白やグレーなど
に統一しがちなんですけど。
KIKI:明るい色のほうが広く感じる、というのはあると思うんですけど、私があこがれるのは濃い色の落ち着いたトーンの空間なんです。
茶室に代表されるように、日本建築って昔はすごく暗かったじゃないですか。
そこに光が入ることでできる陰影の美しさ……それを私も表現したくて、濃い色にあこがれているのかもしれません。
ちなみに、もうすぐ引越すので、床の色や壁の色もいろいろ考えたいと思っています。

自然素材を暮らしに取り込む

――お引越し先のリノベーションは自らの手でやりたいですか? それともプロに頼みたいですか?
KIKI:うーん、私、洋服とかもそうなんですけど、自分の希望は言うけれども提案されるのも大好きなので、やるならプロの方にお願いするかなぁ……。
間取りは自分ですごく興味があるんですけど、間取りの先のことはプロの提案を聞きながらやりたいと思います。
でも結局は自分で決めてやっちゃうかも(笑)。

――お引越し先をどんな空間にするか、またはもっと先の話でもいいのですが、「理想の住まい」や「理想の暮らし」について教えてください。
KIKI:好きな色と同じで、これもたぶん歳とともに変わっていくものだとは思うんですけど、自然との接点を持ちたいというのはあります。
湘南で7年暮らしてみて感じるのは、やっぱり自然が豊かなんです。
庭もあるので、室内に植物がいらないんですよね。
一方、今度の引越し先は都内なので、たぶん室内に自然物を置きたくなると思います。
以前、東京に暮らしていたときには植物を置いては枯らしてしまっていたんですが(笑)、今度は具体的に植物を置くというより、なるべく自然素材のものを取り入れてみようかな、と。自然素材で染められた布や、木や石や革……できるだけ自然に近い色のものを取り入れていきたいなって、漠然と思っていますね。

――洋風、和風といったテイストのこだわりはあるんでしょうか。
KIKI:洋と和のイメージが人によってだいぶ変わってきちゃうと思うんですけど、どちらかといえば和、になるかなぁ……。
でも和風建築にしたいというわけではなくて、洋風な手段で和を表現するということかな?たとえば、地べたでくつろぐスタイルは和ですけど、それは必ずしも和風建築じゃないとできないことというわけではなくて。
テーブルやイス、ソファがある家でも、地べたでくつろぐ和な空間はつくれます。
カーペットなどの洋素材を使っていても、床でくつろぐ空間は和だと思うんです。
その目線の低さが心地よかったりするんですよね。

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自分と場所が育てるということ

――10年後、20年後の暮らしを想像できたりしますか?
40代、50代になってKIKIさんはますます素敵でいらっしゃると思うのですが、そのときの暮らしとは。想像できる範囲で教えてください。
KIKI:今までも、親からもらった家具だったりがあって、そういったものをずっと使ってきたのだから、10年後、20年後に新しいものにばかり囲まれていたくはないな、とは
思います。10年後、20年後に、それ相応の時間が経ったからこそ心地よい空間になるよう、今新しく購入するものも、長く大切に使えるものを選ぶようにしています。
私、(建築家の)藤森(照信)さんの建築がすごく好きなんですが、それは自然とともに朽ちていくことをよしとしているからで。時間の経過を表現できる空間というのは、すごくあこがれます。
――藤森さんの建築は、それこそ何十年も前からそこにあったかのような雰囲気がありますよね。
KIKI:うんうん、わざと素材を燃やしたり焦がしたり汚したり(笑)。
――壁もわざと雑に塗ったり(笑)。お引越し先で藤森流のリノベーション、ぜひ真似してください!
KIKI:(笑) 私は藤森さんの建築にはあこがれるんですけど、一方できれいな空間は、それはそういうものであっていいとも思うんです。ただ自分がそこに暮らしたいか、自分がつくりたいかといったら別な話なだけで。あと、ただ古いものが好きというわけでもなくて……。そういったものは自分が育てていく、場所が育てていくようなものだったりすると思うんです。だから10年後、20年後のために今から育てていって。
――大変だけれども、それが楽しみですよね。長く愛着をもって、手垢をつけて。
KIKI:ものを大切にする、場所を大切にするということと、ていねいに生きるということはつながっているので、それができたらと思います。
――素敵。KIKIさんなら、きっとできます!
KIKI:いやいや、実はいつも楽しよう楽しようとしちゃう性分なんです(笑)。

インタビューその後…

「白い壁に直に絵が描いてあって……シンプルな一輪の花が大きく描いてあるんです。」
インタビューの中でKIKIさんがお話しされた、真似したいなって思った壁。
そこからKIKIさんに植物、花、山野草イメージを膨らませていただきそれをもとにMATERIAL編集部と株式会社フィルさんで壁紙をつくりました!

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