部屋のテーマやテイストを超えて―  必要なのは「いまの自分」に合う色と柄

2017.05.21

部屋のテーマやテイストを超えて―  必要なのは「いまの自分」に合う色と柄 部屋のテーマやテイストを超えて―  必要なのは「いまの自分」に合う色と柄

よりよい住まいを創り出す人たちへのインタビュー

MATERIAL INTERVIEW #05 KOICHI HAMAMOTO

部屋のテーマやテイストを超えて―  必要なのは「いまの自分」に合う色と柄

1973年大阪生まれ。株式会社フィル代表。2000年に壁紙販売サイト「壁紙屋本舗」を、2011年に「輸入壁紙専門店 WALPA」を立ち上げ、日本の壁紙業界に大きなうねりをつくり出したキーパーソン。2015年11月には自社ビルにミュージアムのようなショールーム「WALLPAPER MUSEUM WALPA/OSAKA」をオープン。同年、経済産業省から「先進的なリフォーム事業者」として表彰された。

空間づくりに関するさまざまな分野で活躍する方々にお話をうかがう「MATERIAL」のインタビュー。5回目となる今号では、「壁紙屋本舗」「輸入壁紙専門店 WALPA」の立ち上げ人である株式会社フィルの濱本廣一さんをお招きしました。濱本さんから見た日本の壁紙文化の現在とは?

自分で壁紙を貼りかえて、住まいを自由に彩る暮らし――そんな生活が日本で実現できるようになったのは、ひとえに「壁紙屋本舗」「輸入壁紙専門店 WALPA」と、それらを立ち上げた濱本さんのおかげかもしれない。「壁紙屋本舗」がスタートしたのは2000年。それまで、壁紙の貼りかえといえば、プロに頼むものというのが定説だった。そして、そこにラインナップされているのは当たりさわりのない、部屋の邪魔にならない無個性なデザインの壁紙ばかり……。

15歳から23歳まで壁紙職人としてひとり親方について現場をまわり、来る日も来る日も日本の住宅に白い壁紙を貼り続けた濱本さんは、大柄や派手な柄を見つけるたびに「これを面白いと思ってもらえれば、壁紙文化がもっと広がっていくはず」と考えていたという。そんな思いのもと、27歳で独立した後「壁紙屋本舗」を立ち上げ、38歳(2011年)には「輸入壁紙専門店 WALPA」をオープン。それまで日本に入ってきていなかった海外ブランドの個性的な壁紙を、日本の住まいに取り入れやすくするきっかけをつくった。

そんな「WALPA」は、大阪をはじめとして4店舗を展開するまでに成長。この事実は、日本にもじわじわと壁紙文化が浸透しつつあるということの証左だろうか……?

(聞き手・坂田夏水)

テーマやテイストより「自分」

 

――濱本さんが若かったときは、日本の住宅に面白い壁紙を貼りたいという思いがあったとしても、それがかなわなかった時代だと思います。今現在はどうですか?

 

濱本:うーん、一部はかなったと言えるんじゃないかな。普通のリフォームや建売ではないリノベーション業者などが、面白い壁紙だとか面白い内装を取り入れだしてくれたので、そこからだいぶ進んだと思う。

日本のメーカーさんもだいぶ意識が変わってきて、大柄は売れない、派手な色は売れない、という先入観もなくなってきた。

 

――国産メーカーもどんどん面白い柄をつくってきてますもんね。でもそれは輸入壁紙をB to Cにした濱本さんの功績かと。

 

濱本:そうなの? そんなことないと思うけど(笑)。

 

――濱本さんにとって、「柄」ってなんですか? 柄物の洋服は全然着ないですよね。

 

濱本:着ない(笑)。でも家の壁紙はハックニーのじゅうたん柄と象の柄。それがまたかわいいんだよ。最近、アフリカ系がきてる。また貼りかえるけど。

 

――濱本さんは、世界中のさまざまな柄の壁紙を、毎年いろいろなところで見てきているじゃないですか。その経験から、柄を選ぶ面白さを伝えるとしたら。

 

濱本:まず、多くの人が「自分に合う柄か」という観点で探してないと思う。「インテリアに合わせる」とか、「こういうテイストだから」とか、自分以外のものに合わせて選ぶ人が多い。

 

――「北欧系だから」とか「クラシックなおうちだからこういう壁紙でなきゃいけない」とか。

 

濱本:そう。そうやってテーマを決めてテイストを決めてって、もちろんそういうのもあったほうがいいねんけど、基本は自分に合わせたほうがいいと思う。いまの自分に。「元気になりたいから、元気になる色が散りばめられているものを選ぼう」とか、そういう感じで。

 

――なんでそういうふうに選ぶ人が少ないんでしょう? お洋服だとそうやって選ぶのに。

 

濱本:壁紙は一生もの、みたいに思ってはる人が多いからね。

部屋のテーマやテイストを超えて―  必要なのは「いまの自分」に合う色と柄

パリのおばあちゃんは年に4回貼りかえる

――海外はそうじゃないんですよね。海外では、なんであんなに頻繁に貼りかえたりして楽しめるんでしょう。

 

濱本:それはやっぱり、家に人が来るから。たまたまパリの壁紙屋さんに遊びに行ったときの話があってね。そこはパリの中でも貧しい地域の壁紙屋さんで、行ったのは9時から30分くらいだったんだけど、その間に、10組くらいお客さんが来るんだよね。

 

――ええ!? 30分で10組が壁紙を選びに?

 

濱本:そうそう、若い男の子からベビーカー押した妊婦さんからおばあちゃんから職人さんっぽい人から……。しかも、10組のうち8組が買って帰ってった。

 

――スゴイ! 生活必需品や消耗品みたいな買い方。

 

濱本:お店に来ていた70歳のおばあちゃんに「何しにきてるの?」ってインタビューしたら、「決まってるやん、壁紙買いに来てる」って(笑)。それで「どこ貼りかえるんですか?」って聞いたら、玄関入って突き当りの壁を年に4回は貼りかえるんだって! 70歳よ? 貼りかえる理由は「友達が遊びにくるから。前と同じ壁紙だったら恥ずかしいでしょ」って(笑)。

 

――「前と同じお洋服着てパーティーに行けないわ」みたいなノリ。

 

濱本:そう、そんなノリ。その人、週に一回はお店に来てるんだって。週に一回、壁紙の新作がないかをチェックしにきて、気に入ったものがあったら1本買う。1本で30ユーロとかだから、日本円で3000円ちょっとだけど、それを年に4回買うんだって。

 

――おしゃれですね。デパートに週に一回行くマダムと一緒!

 

濱本:しかも、そのおばあちゃん杖ついてるのよ(笑)。杖ついてヨボヨボなのに、壁紙1本持ってレジに行くから、思わず「おばあちゃん、ちょっと話聞かせて!」って声かけた(笑)。それでさっき言ったみたいなことを教えてもらったんだけど、さらに聞くと「絶対、紙製の壁紙しか貼らない」って。いま日本ではフリース(不織布)壁紙が流行ってるし、世界的にもD.I.Y.フリースだけど、そのおばあちゃんが選ぶ壁紙は絶対に紙。

 

――なんだろう、それ。どんなこだわりなんですか?

 

濱本:(フリース壁紙だと壁にのりを塗って貼るので)「手伸ばしてのり塗るのしんどいやろ」「フリースみたいな貼りにくい壁紙ないわ」って(笑)。(壁紙自体にのりを塗る)紙の壁紙だったら、テーブルの上に置いて自分のペースでゆっくりのりを塗れるから。

 

――オープンタイム(のりを塗ってから壁に貼るまでの時間)もあるし、紙にのりを塗るのが、彼女にとってはメリットなんだ。

 

濱本:紙にのりを塗れば柔らかくなるしね。で、こんなおばあちゃんが自分で貼ってるなんてすごいなって思った。ちゃんと文化になってる。

 

――生活の一部、日常なんですね。

 

濱本:そう! しかもおばあちゃん、人と同じものは絶対貼らないんだって(笑)。本棚柄かレンガ柄を貼ってる人が多いから、その店にも売れ筋のそういう柄は置いてあるけど、人とカブるのは恥ずかしいから、そういったものと違うのが入荷したら真っ先に買うんだって。ほんまに毎週来てるのかな、と思って店の大将に聞いたら、「うん、月3回は絶対来てる」って(笑)。

ちなみにその店、「WALPA」より広い。なのに黒人の大将がひとりでやってるから、客が「こんな柄ほしい」って見せても「あっちあっち」って言うだけ(笑)。ご案内しましょうとかじゃなくて。そりゃ30分に10組も来たら、ひとりじゃ対応できないからね。

 

日本でも徐々に浸透しつつある壁紙文化

――今回、海外と日本の違いと、これから日本も海外に近づいていくっていう話もお聞きしたいんですけど、パリ、ニューヨーク、ロンドン、東京で「入居後の部屋の模様替え・改修をした経験がある人」の率がだいぶ違うじゃないですか。パリでは57.5%、ニューヨークでは46.9%、ロンドンでは36.4%、そして東京が3.3%!(※) この東京の数値が30%に近づくには、あとどれくらいかかると思いますか?

 

※出典:(株)リクルート 住宅総研「愛ある賃貸住宅を求めて NYC,London,Paris&TOKYO 賃貸住宅生活実態調査」平成22年

 

濱本:30%だと、あと3年くらいじゃない? 「WALPA」にも中高生が修学旅行に来るんだけど、自分で壁紙を貼ったことがある子って、ほんまにゼロ。でも、この子たちが3年後に大学生になって、自分で部屋を改装できるようになったら……。

 

――なるほど、いま教育しているところなんですね。こういうことができるよって。

 

濱本:そう、彼らが消費者層になったら、爆発的に増えそう。

 

――どれくらいの人数が修学旅行に来てるんですか?

 

濱本:年間10校くらいで、各校40人以上だから、400~500人? その子たちに「好きな柄の壁紙見ておいで」って言ってる。みんな、なかなかこういう場に出会う機会がないし、そもそも家自体のこともあまり知らない。「自宅は賃貸?」って聞いても「賃貸ってなんですか?」って言われるくらいだから。そんな感じだから、壁紙なんて普通にそこにあるものとしてまったく気にしてないし、「そもそも貼るものなの?」って(笑)。

 

――逆に、小さいころから親と壁紙を貼りかえたりペイントしたりしていたら、ブランドも自然と知るようになります。

 

濱本:フランス人とかは、たいがい知ってるのよ。おじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さんと一緒にやるから……ちょっとフランス人!(フランス人スタッフを呼ぶ)

パリでは、家族と一緒に壁紙貼ったりペイントしたりするのは当たり前のことなの?

 

フランス人スタッフ:はい、当たり前のことですね。

 

――初めて壁紙を貼ったのは、何歳のときですか?

 

フランス人スタッフ:え~それは覚えてないですけど、けっこう早かったと思いますよ。今でもお父さんたちはずーっと続けてますし。自分が18歳で大学入学のため家を出てからも、冬休みに戻ったら「あれ? また変わってる」っていうのもよくありました。

 

――日本のおうちについて、どう思いますか?

 

フランス人スタッフ:はっきり言っていいですか?(笑) 最初はね、全然面白くないと思った! 引っ越ししていろんなところ見て、一戸だけ木造の古い家があって、それだけは面白かったけど、ほかのマンションはほんとに……なんとも思わなかった(笑)。

 

――ご自宅はどうしてるんですか?

 

フランス人スタッフ:壁紙の貼りかえはしてますよ。この瞬間の気持ちに一番近いのはあの壁紙っていうふうに、あんまり深く考えないで気軽に貼りかえてます。気に入らなかったらまた変えて。

 

――ありがとうございます。濱本さんのお話のとおりだ、フランス人!

 

濱本:そうなんだよ、フランス人(笑)。

部屋のテーマやテイストを超えて―  必要なのは「いまの自分」に合う色と柄

壁紙だけでなく「ふすま紙」も面白い

―――日本にも、柄や色を家に取り入れて楽しむ習慣はありましたよね。今は下火になってしまったけれども、ふすま紙文化とかまさにそうだと思います。ということで、最後に、ふすま紙についてお聞きしたいです。

 

濱本:昔の松とか鶴柄の四枚セットのふすま紙ってすごかったもんね。たしかに今ではそういうのも、あまり見なくなっちゃったけど……。

 

――今回は、輸入壁紙専門の濱本さんと、和柄のふすま紙にトライしてみたいんです。

 

濱本:ふすま紙ね、壁紙屋だからなぁ。

 

――たとえば私がつくった、獅子地紋の伝統柄のふすま紙。本当はもっと小さいんですよ。それをカサマンスの「ミドダマ」と同じぐらいの縮尺にしたんです。

 

濱本:ホンマや、ミドダマと似てる。

 

――和柄でも、大きくすることによってダイナミックで面白い柄になるし、海外や今の若い人たちにも受け入れやすくなるんじゃないかと。

 

濱本:ふすま紙ってもともと季節を感じるもの、たとえば花鳥風月だったりする。それを壁紙のように使えるリピートの総柄にしたら面白いんじゃないかって思うんやけど。四季を感じる柄、という特徴は残しつつ……。

一枚でも完結するし、つなげても楽しめる柄がいいよね。たとえば、昔のイラストレーションで、最近流行ってるやつとか?

 

――鳥獣戯画?

 

濱本:あ、それ。そういうのがリピートしててもいいかなぁって。いま、スクラップウッド柄より動物柄が盛り上がってるんだよ。

 

――じゃあ、その流れに乗って、新しい日本的な動物を出しましょう。

 

濱本:そのほうが面白いんちゃうかなぁ。

部屋のテーマやテイストを超えて―  必要なのは「いまの自分」に合う色と柄

インタビューその後…

「一枚でも完結して、つなげても楽しめる柄」
「壁紙のように使えるリピートの総柄」
「新しい日本的な動物」
これらのキーワードからイメージしてふすま紙の柄を考えました。
紙の質感や色の重ね方によって、違った雰囲気を出すことが出来ます。

部屋のテーマやテイストを超えて―  必要なのは「いまの自分」に合う色と柄

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